2011年05月04日

その57:北海の奥座敷

それは、私が今までに見たことがない規模の海戦だった。

バルト海に入ってすぐ、我々はスウェーデンの私掠船2隻と戦闘に突入した。
背後から強襲を受けたため、私の後方にソフィヤの船、さらにその後方に私掠艦隊と、一直線に並ぶ形で戦闘に入った。

当初、私は進路を維持したまま戦闘から離脱するつもりだった。
相手の船は大型で、とても勝てるとは思えなかったからだ。
ところが背後を振り返ると、ソフィヤの船は船腹を見せて応戦していた。
ソフィヤの船から無数の砲弾が撃ち出され、敵船を貫いたかと思えば、同じく無数の砲弾がお返しとばかりにソフィヤの船へと注がれる。
双方、いったいどれだけ大砲を積み込んでいるのかと思うような光景だった。

その光景を見ながら指示を待つ船員たち。
私の表情を伺っていた。
「ええい、私一人逃げられるか! 面舵いっぱい、右舷砲撃戦用意!」
「アイアイ、サー!」





「ようラモン、アンタに手紙が届いてるぜ」
その日、酒場で私が目を覚ますと、私は手紙を受け取った。
ソフィヤが少し前に酒場に来て、マスターに預けていったらしい。
ああ、バルト海に行く約束の件かな。

――「しばらく席を外しておりますが、アパルタメントにはご自由にお越しください。守衛には話を通してあります。 ソフィヤ」

アパルタメント訪問の別れ際に、私は今夜ソフィヤとバルト海に行く約束をしていた。
バルト海の奥にはリガという街があって、これが非常に航海者泣かせの港だという。詳しい事情は知らないが、そのような港に行くのなら、一人よりは連れがいた方がいいに決まっている。
北海探検を考えていた私にとって、ソフィヤの提案はまさに渡りに船だった。

アパルタメントに行くと、副官の姿だけでソフィヤ本人はいなかった。
おかしいな、守衛の話では在宅中ということだったが。
そう思って見渡すと…。

隠れてる?

・・・・・・・。
いったい何をしているのか。
そこには、柱の影に身を隠しているソフィヤの姿があった。
意識が戻ったソフィヤを問い詰めると、手違いだ、操作ミスだと主張するのだが。その必死さがかえってあやしい。




我々は北海の港を一つずつ巡り、いよいよバルト海を目前にリューベックへと寄港した。
「リガの街ではスラヴ語しか通じないそうよ」
リューベックの街中で話を聞くと、こんなことを教えてくれた。
「リガが怖いと言われる理由、わかりましたか?」
通訳を終えたソフィヤが言った。
事実上リガ固有の言語を話せないと、たとえ海賊にやられて入港しても、船の修理も料理の注文もできないのか。
恐れられている理由が分かった気がする。

しかし、理由はそれだけではないとソフィヤはいう。
・ノルド語でも通じない独特の言葉
・屈強なスウェーデンの海軍(私掠船)
・危険海域であること
・海賊による封鎖が容易な地形
・安全海域からの距離の遠さ

「逃げ込んだら最後、凍てつく辺境の地でいつ来るとも知れない助けを待ちつづけるのがどれほど苦痛なことか、わかりますか」
北海の荒れた空と海を背景に、悲壮感たっぷりに語るソフィヤ。
きっと彼女にも辛酸を舐めた経験があるに違いない。
「いえ、ありませんよ。とりきちさんが言ってました」

受け売りかよ!!
脱力して転びそうになった。

「では、行きましょう。北海の奥座敷へ」
話を聞く限り、奥座敷というより座敷牢だけどな。




この3代目サンタ・クララ号に積んでいたのがデミ・カルバリン砲だったのは幸運だった。
私が交戦に転じた時点で、戦場の中心からかなり離れていたのだが、さすが長射程が売りの大砲だけあって、この距離でも充分射程圏内だ。
手近な海賊と1対1で戦うときには、文字通り無用の長物だったこの長射程が、初めて活かされた。
「6門×2に増設したデミ・カルバリン砲の威力を思い知れ!」

しかもソフィヤの砲撃が私とほぼ同時に命中し、敵船が大きく揺れる。
打ち合わせもしていないのに完璧じゃないか。
このとき私は、もしかしたらソフィヤも、勝利を確信していた。

だがその確信はあっけなく裏切られることになる。
反撃に転じた2隻のスウェーデン私掠船からソフィヤの船へと、それまでで最大の数の大砲の弾が直撃する。
2隻からの同時攻撃を受けたソフィヤの船はあっという間にボロボロになり、その次の一斉砲撃で航行不能に陥った。
「離脱お願いします!」
ソフィヤの叫びに、私はただ従うしかなかった。


私が戦域を離脱すると、諦めたのか私掠船はそれ以上は追って来ようとはしなかった。
一方ソフィヤはと言えば、私に曳航されたまま船の修理にいそしんでいる。
「私もまだまだ青いですね」
聞けばスウェーデン艦隊とは何度もやりあっている間柄だそうで、戦績も勝ったり負けたりを繰り返しているそうだ。
次の港を見つける頃には、すっかり修理を終えてしまっていた。



ストックホルムに入港すると、ソフィヤの勧めで酒場に入った。
この先はリガを残すのみだ、前祝いも悪くない。
「いらっしゃいませー」
そこにはなんと、酒場娘が二人いた。

生き別れの姉妹?

生き別れ姉妹の姉イングリド(左)、妹ソフィヤ(右)。
このネタのためだけにその服を持って来ているとは。
「ここでお姉さんと末永くお健やかに。アパルタメントその他は私がありがたく…」
「よろしい、リガに放置します」
それだけはご勘弁を、お代官様。
「冗談ですよ。放置するのは次回、とりきちさんと相談してからです」
もっとひどいと思います。

そんな折、ジャン=フィリップからテレパシーが届く。
「こんばんは、調子はどうですか?」
私はバルト海に来ている状況を説明する。
「冒険してるね、でもソフィヤさんがいるなら大丈夫か」
私一人では心配だとでも言いたいのか!?
たった一日で見破られた。恐るべき慧眼の持ち主である。



そして、長い航海の末、我々はついに最果ての地、リガに到着した。
最果ての地と言えば最強の武器と最強の防具が…!
「期待のしすぎは禁物です」
ところが、冗談のつもりがお宝は本当に存在した。道具屋に。
売られていたのは琥珀の首飾り。値段は高すぎてゼロがたくさんあったことしか覚えていない。
「存外、こういうところにお宝があるのかもしれませんね」
首飾りを試着しながら、ソフィヤ。思わぬ掘り出し物にご満悦の様子。
「どうでしょうか、ラモンさんも自力で帰って経験という名のお宝を身に付けてみては」
なんというか、私を放置したい誘惑に駆られている様子を、もはや隠してもいないぞ…。


torikichiからテレパシーが届く。
「君にしては珍しく夜更かしさんだな」
いや、今寝たら確実に放置される、生きて帰れる保証がないんだよ!
必死で訴える私。
「ああ、ソフィヤさんから話は全部聞いてる。てっきり自力で帰るものと」
黒幕か、黒幕なのか。
「君ならどんな不遇の場所でも楽しんで帰ってくるかと。むしろそういうときほど君は輝く」
私は決して、望んで不遇をかこっているわけではないんですが。
愉快な事件が向こうから勝手に舞い込んで来るんだよ、頼んでもいないのに!


すでに時刻は2時近く。あまりに眠すぎてスラヴ語の翻訳メモと間違えて、うっかり投資申請書を使ってしまったりとミスはあったものの、楽しい一日だった。
posted by すぽきゅん at 01:00| Comment(2) | TrackBack(0) | ラモンの航海日誌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
黒幕扱いとはなんたる濡れ衣!

・・・・・・・・といっても、君はきっと「え、でも」とか言うでしょう。なので、本当に黒幕になったほうがいいのかなと思う今日この頃です。

でも君はどうみても愉快な事件に自分からつっこむタイプですよ!
Posted by とりきち at 2011年05月10日 16:41
ソフィヤさんととりきちさんを引き合わせてから、ソフィヤさんの私に対する扱いが日に日に悪くなっている気がする。

その原因を黒幕と呼ばずして、なんと呼べと!
Posted by ラモン at 2011年05月11日 22:15
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